東京地方裁判所 昭和49年(ワ)3349号 判決 1975年1月28日
原告
野辺茂
右訴訟代理人
小倉忠義
被告
池袋食糧運送株式会社
右代表者
那須喜作
右訴訟代理人
杉野修平
主文
被告会社は原告に対し、別紙目録記載の株式につき原告のため株主名簿の名義書換手続をせよ。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
第一 双方の申立
原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求めた。
被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求めた。
第二 双方の主張
一、原告の請求原因
(一) 原告は昭和四九年四月二六日高橋聡介から、別紙目録記載の被告会社の株式(以下単に本件株式という)を買受け、その株券の交付を受けた。
(二) よつて、原告は被告会社に対し本件株式につき原告のため株主名簿の名義書換を求める。
二、被告の答弁
原告の請求原因(一)記載の事実は不知。
三、被告の抗弁
被告会社は昭和二八年五月二〇日に取締役会において「被告会社の株式譲渡による名義書換は取締役会の承認をえてこれを行う」旨の株式の譲渡制限を定めた。しかるに、原告は右制限を充分知りながら本件株式譲渡につき取締役会の承認をえずしてなした、したがつて、本件株式の譲渡は無効であり、原告は被告会社に対し、右譲渡を理由とする名義書換を請求することはできない。
四、被告の抗弁に対する原告の答弁
被告主張の抗弁事実は否認する。
第三 証拠<略>
理由
一<証拠>によると、原告の請求原因(一)記載の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
二ところで被告は抗弁として、被告会社は、その取締役会において株式譲渡は取締役会の承認を要する旨の譲渡制限決議があるのに、本件株式の譲渡に右取締役会の承認がなされていないから無効である旨、主張するが、そもそも株式の譲渡制限は商法二〇四条一項但書によつて会社の定款によつて規定されなければ効力を有せず、単に被告主張のように取締役会の決議をもつて右制限をなしたとしても、第三者には勿論のこと株主自身に対してもその効力はないと解するのが相当である。したがつて被告の右抗弁はその余の点につき判断するまでもなく主張自体失当といわざるをえない。
三右事実によると、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担については民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(山口和男)